モーニング娘。17「⑮Thank you, too」

現状ハロプロ楽曲制作体制はおおまかに分けて、橋本慎氏をトップに置いたチーム橋本と、つんく氏をトップに置いたチームつんくの2つの体制あるということが分かっています。
いくらつんくさんが素晴らしい才能を持ったクリエイター、プロデューサーだとしても、全てのグループの全楽曲を手掛けるとなると、それぞれの楽曲のクオリティにムラが出来てしまうのは仕方のないところです。モーニング娘。に力をいれてるときは他のユニットの楽曲の出来がイマイチ・・・。だとか、またその逆のことも起きてしまうというような不幸な現象を減らし、常に全グループが高いクオリティの楽曲を享受できるようにするために、つんくプロデュース以外の体制も用意しておくというのはとてもとても正しいと思います。
この体制になってから数年たちましたが、いまのところはなかなか上手く行ってると言っていいのではないでしょうかね。

前述の2つの体制はそれぞれの楽曲を並列に置いておけるシングルでは無理なく共存できるのですが、ことアルバムとなると難しい問題が持ち上がります。
アルバムは、曲順や収録曲をどれにするかなどによって全体のクオリティが決まってくるものなので、どちらの体制のどの曲をどういう順番で並べるか。などをイニシアチブを取ってコーディネートする人物、プロデュースする人物が必要になってくるのかなと思います。
じゃあそれは誰がやるのか、現状誰がやっているのか?
こぶしファクトリーの『辛夷其ノ壱』なら、チームつんく楽曲が一曲もないのでやり易かったと思いますし、なんとなく橋本慎さんが仕切っていたんであろうことが想像できます。しかしモーニング娘。のように、チームつんくとチーム橋本楽曲がそれぞれあるようなグループはどうするのか。℃-uteやjuice=juiceのアルバムではどうしていたのか・・・。

今回のモーニング娘。の新しいアルバムは。ボーナストラックの愛の種をのぞく全14曲中チームつんく楽曲が11曲+過去のつんくプロデュース楽曲1曲、チーム橋本楽曲は2017年リリースのシングル楽曲の2曲。とつんく色がかなり強い内容になっています。

ここまでくればアルバム全体のプロデュースもつんくさんなのでは?と思いスタッフクレジットを確認しましたが、そのような記述は確認できませんでした。
アルバム全体の制作体制がどうなっているのかは謎のままですが、今回の収録曲がほぼすべてチームつんく楽曲という割りきった判断は、アルバム全体に一本筋を通したまとまりのある物にするためには賢明な判断と言えると思います。
余計なノイズになるものがあまりなく、全体を通してすんなりと聴けて良かったです。
モーニング娘。に関してはこれからもチームつんく楽曲を軸にして、かつてのつんくプロデュース体制に近い形を維持してやっていくという方向性の提示なのかもしれませんね。
割りきった判断といえば、シングル曲も収録されたのは2017年のものだけに留め、全体のボリュームも抑え気味にしました。ここらへんは卒業したメンバーとの兼ね合いみたいなものも少しある気はします。
これからリリースされるであろう他のグループのアルバムでも、今回のようなバランス感覚を持って作って頂けたらと思います!

肝心の内容ですが、ここ数年つんくさんが押し進めてきたEDM路線の流れを継続したものになっています。
全体のトーンはクールというか抑え気味で、『青春小僧は泣いている』のようなぶっ飛んだ曲がないので少し物足りないような気もしなくもないですが、大久保薫平田祥一郎、両氏がアレンジを手掛けたの熱量の高いエレクトロサウンドの楽曲はどれも高クオリティで聞き応えたっぷり。

地を這うようなベースリフが鮮烈なフックになりながら、全体のミニマルでクールなトーンが最高にかっこいい『CHO DAI』
同フレーズの繰り返しとハウス的なビートでダンスミュージックとしての機能性を高めつつも、どう聞いてもつんく楽曲!な個性を打ち出す『私のなんにもわかっちゃいない』
少しアダルトなムードのデジタルなジャズファンク『Style of my love』(飯窪、小田、牧野のユニットは初期タンポポを思わせる説得力ある組み合わせで素晴らしい!飯窪さんちゃんと歌える!)
切迫感溢れるトランス風ナンバーにアイドルソングらしいフックを散りばめた『ナルシスかまってちゃん協奏曲第5番』
あたりが個人的には好きです!

あと個人的にグッときたのは『青春Say A-HA』→『若いんだし!』の流れですね。
この2曲は10代という難しい時期を芸能活動に捧げるアイドルたちへの的確な批評眼と、そこだけに留まらない温かい視線を感じます。
『青春Say A-HA』のサビの歌詞が凄い。
【「コソコソ恋愛」ってな なんか燃えるけど バレなけゃ良いってな そんな意味でもない ひとつ選ぶのって なんか難しい こんなのこんなのこんなのは 青春なんかじゃない】
【「堂々恋愛」ってな なんか素敵でも 他人にとっては 迷惑なんかもね まっすぐ生きるって なんか難しい そんでもそんでもそんでもね なんか眩しい】
どうだこれ!こぶしファクトリーのヲタとしては具体的な人物が思い浮かんでしまうところですが・・・。そんなことを抜きにしてもとても良く出来た、それでいて色々と考えさせられる歌詞に唸ってしまいました。深い!
そんな歌詞からの流れで10代の迷いや、違う道へと向かう決断を温かく祝福するような『若いんだし!』を聴いたら泣くしかない!
んー。やっぱりつんくさんはアイドルソングの作り手として一段高いレベルにいると改めて実感!